小沼愛子
新型コロナウイルス感染拡大を受け、アメリカでは外出をしないよう推奨、制限をかけている自治体も多くなっています。
有難いことに「大丈夫ですか?」「どうしていますか?」というメッセージを日本から沢山いただいているので、今回は自分の状況を少し紹介したいと思います。
私の住むボストン(マサチューセッツ州)でも非常事態宣言が発動され、生活必需品を売る店舗以外はほとんどが閉まり、大学を含む学校はすべて閉鎖となっています。
地元ハーバード大学はいち早く「全ての授業のオンラインに切り替え」を宣言をし、それに倣って他の大学でもオンライン授業化が進められている印象です。
少なくともこの地域においては、小中高学校でも何らかのオンライン授業を提供しています。ボストン市では、自宅にパソコンやタブレットがない子供達に無償でノートパソコンを提供しているそうです。子供達だけでなく、日本でも推奨されている「テレワーク」をしている大人も相当数になると思います。
さて、フリーランスで週100人くらいの人に直接会ってセッションやレッスンを行うのが通常の私の仕事と生活がどうなっているか、ですが。
この2週間、必需品買出しのため数回外出したのみ、それ以外は完全に自宅に籠っています。
普段は障がい者施設で週に6つの音楽療法グループを担当していますが、施設閉鎖で全セッションがキャンセル。
講師を務める音楽学校では全てのレッスンがオンラインに移行しました。これについては多くの音楽学校や個人レッスン提供者が同じことをしているようで、「一気にオンラインレッスン一色に変化」した様相です。
ということで、私の生活もある日突然テレワーク一本となりました。
オンラインで教え始めた講師仲間達は、一様に、「普段と勝手が違ってとても疲れる」「準備や個別連絡に時間を取られて大変」と話しています。
私は以前からオンラインレッスン提供をしてきましたが、音大受験対策や音楽療法士の方のための限られたレッスンであるため、オンライン上で何時間も休みなしに次々と教えた経験はゼロでした。
今回、自分の生徒層を改めて見直すことになりました。初心者から上級者、演奏音楽ジャンルは様々、年齢幅は巨大、学習障害、発達障害、精神疾患などを抱える子供達もいる、という状態です。そのため、使用する楽譜、教材、音楽、アプローチ方法は見事なまでにバラバラ。
いつも教えている生徒さん達なのに、形式が変わっただけで普段のやり方が通用しないことを突きつけられ格闘する日々を送っています。
限られた環境で各生徒のニーズや傾向を考慮し、準備をする過程は、音楽療法のセッション準備と類似点が多く、創造性や柔軟性の重要さが身にしみます。
結果的には自分のアプローチや働き方を考え直す絶好のチャンスになっていますし、オンラインレッスン技術の向上はもちろん、その可能性について見識が深まった実感もあり、この学びの毎日を有難くも感じています。
オンラインでのレッスンのためにしっかり準備するのはそれなりに大変です。しかし、少しずつ始めることができれば負担も少なく、発見は多く楽しくもあり、何より直接会うことのできない生徒さん達とつながれることには大きな価値があるため、その意味では心からお勧めします。
もちろん、「普通の対面式レッスンと同じですよ」とは決して言えませんが、発達障害のあるお子さんなどはオンラインの方が落ち着いてレッスンやセッションに臨める場合もありますし、生徒さんの状態や条件によっては質的な意味で対面式と比べて遜色ない場合もあると思います。
今回のケースについては、外出規制によって生徒やその家族の多くがストレスと不安を感じている状況下で行われています。そんな中での全く新しい試みであるため、オンラインへの不信感や不安感の表出はもちろん、時には個人的なストレスをぶつけられたりもします。そこへの対応が私にとって大きなストレスでもあるわけですが、しっかり準備して落ち着いて挑むことで相手側の態度や気持ちが柔らかくなっていくことが分かります。
不安表出の多かった一週間目でしたが、二週目までに「オンラインレッスンをしてくれて本当にありがとう」という言葉をいただくことがあっという間に急増しました。
これ以外にも、生徒側には遠方の好きな先生のレッスンを受けられる利便性があります。特に、特定のテクニックやジャンルを学びたい中級以上の生徒さんには自信を持ってお勧めできるレッスン形態です。その意味では、この状況が収まった後も今まで通り専門性の高いオンラインレッスン提供を継続していきたいと考えています。
これからも、オンラインレッスンを提供したい方、受講してみたい方々のために色々な情報をシェアしていきたいと思っています。ご興味のある方には是非一度受講していただくことをおすすめします。
さて、次回のブログは「オンラインでの音楽療法セッション」がテーマです。
「オンラインでレッスンはともかく、セッションなんて絶対無理」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こちらも急ピッチで成長中なのがアメリカの現状です。
「ニーズがあればそれに対応するのが音楽療法士」ということで、是非オープンマインドでご覧いただければと思います。