小沼愛子
皆さまこんにちは。先週、レスリー大学にて音楽療法のイベントに参加してきました。
イベントのタイトルは「Voices from the East: Definitions and Experiences of Music Therapy in Asia Regions」で、アジア諸国での音楽療法事情について紹介するものでした。
レスリー大学はボストン市にすぐ隣ケンブリッジ市にある学校です。音楽療法のコースがあり、日本人卒業者も数多く輩出してきました。一昨年この大学の音楽療法教授として赴任したXueli Tan 博士が、「アジアの音楽療法について見識を深めましょう」ということで開催したこのイベント、アメリカMT界では稀な内容だったと思います。
発表者の出身国は、
- インドネシア
- 韓国
- 日本
- 中国
- シンガポール
- 香港
- タイ
- 台湾
と、8カ国に及びました。
発表形式は、
- スカイプを通して(2ヶ国)
- スカイプでのインタビューをビデオに撮ったもの(3カ国)
- 実際に会場で発表(2ヶ国)
- 会場とスカイプのコンビネーション(1カ国)
と、複数に及びました。
全てがネット上でオンタイム放送され、質問はオンライムで世界中どこからでも届くという、とっても今時なスタイルのイベントでした。
個人的には、「そうなんだあ」と感心したり疑問に思ったりが延々と続く合計6時間で、ここで得た情報からまた色々と考察できて非常に勉強になりました。
各国の共通点、相違点、実に色々ありましたので、いくつか例を挙げてみたいと思います。
1) インドネシアのガマランのように、その国特有の楽器&音楽に特化している例もあるが、圧倒的に西洋楽器を使っているケースが多い。各国のセッションの写真を見ていると、写っているいる人間がアジア人なだけで、西洋人に入れ替えたらアメリカやヨーロッパの音楽療法現場に見える。
2) どの国でも音楽療法は国家資格にはなっていない。
3) 音楽療法教育のプログラム内容やレベルは実に様々だが、アメリカやヨーロッパのMT教育が大きな影響を与えている。特にアメリカの影響は大きく、国によっては「アメリカとほぼ同じ」形式の教育になりつつある(らしい)
4) どの国でも音楽療法の認知度は少しずつ高くなっているが、その捉えられ方やイメージは多岐に渡り混乱していることが沢山ある。
5) 音楽療法という職業は存在していても、音楽療法の定義が非常に曖昧な国もある。
6) 音楽療法学術誌が発行されている国は数カ国のみ。
などなど・・・もっと色々あるのですが、細かいことは書ききれません。
また、ここでの情報、特に経験談はかなり主観的なものであるケースもあったため、このイベントで聞いたこと全てにどの程度の信憑性があるか分からないのですが、かなりの勢いで音楽療法教育制度を確立に向かって進んでいる国もあるようで、5年後、10年後に各国での音楽療法がどうなっているのか、非常に興味が湧きました。「アジアでは日本が音楽療法先進国」というのが定説かと思いますが、その事情は近い将来変わるかもしれないと思ったりもします。
残念ながら(予想通り)、アメリカでやってるイベントなのにアメリカ人の参加者は少数に止まりました。
「他国音楽療法事情は決して自分に無関係ではないこと、世界は繋がっているという認識が広まる必要がある。より多くのアメリカ人(特に音楽療法の教授達)、そして他の国で活躍する音楽療法士達に興味を持ってもらいたい」と、主催者のTan博士とランチの時間に語り合いました。
このようなイベントを果敢に主催して下さったTan博士、お手伝い下さったMTインターンのCalvinさんに心から感謝申し上げます!
ここで発表していた人達の多くが今年7月の音楽療法世界大会でも発表するそうです。アジアの音楽療法事情は刻々と変化しています。日本にいながらにしてその様子を垣間見れる、貴重なチャンスとなることでしょう。
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