細江弥生
私が最近読んでみたいと思ったアメリカの音楽療法士が書いた本、“Resilience over Burnout: A self-care Guide for music therapists” に関連した話です。
本著者のAmi Kunimuraさんが、リサーチによって判明した、音楽療法士が「燃え尽き症候群」になる引き金となりうる3つの要因について、Youtube 動画にて(https://youtu.be/34fZHMvh1lk)話しています。
以下がその3つの要因と、各項目について私が考えたことです。
1、仕事の要因
- 十分でない給料、報酬
- 多すぎる業務
- クライエントの問題の大きさや予後
音楽療法士の仕事は、報酬が充分ではないにもかかわらず、業務が多いこと、またクライエントの抱えている問題が深刻で重大なことが多いものです。また、重度障害のクライエントに長期に渡り関わる場合に自分の仕事の意味が見えづらくなり、燃え尽き症候群になる可能性も理解できます。
2、個人的要因
- 非現実的な期待や理想主義
- 年齢(若い、経験不足)
- スーパービジョンの欠損
音楽療法士には情熱的で自身の仕事を熱心に取り組んでいる人が多いと思います。それは良いことであると同時に、いき過ぎたり現実とかけ離れていると、燃え尽き症候群の要因になるのも納得できます。
また、経験不足や年齢の若さ、またスーパービジョンなしで自分だけで解決しようと思う堂々巡りに陥ったり、ネガティブな思考ループから抜け出せなくなり燃え尽き症候群につながる可能性も想像できます。
最近は、フェイスブックやオンラインで遠く離れた地域にいてもお互いをサポートできる体制が整ってきました。私自身もオンラインでのコミュニケーションに随分助けられています。音楽療法かけはしの会でも、会員様サービスとしてオンラインピアサポートを開催していますので、ぜひご利用ください。
3、社会的要因
- 職業的マイノリティー
- 音楽療法、音楽療法士に対する誤解
- 孤独、サポートの欠損
- クライエントとの音楽的境界の欠損
- 役割の曖昧さ
音楽療法士は職場で一人で行動する機会も多く、そして立場的に弱いポジションにあることも多いものです。また、地域に仲間がいなかったり、音楽療法について誤った認識を持たれて傷つく機会も多くあると思います。
興味深いのは、私たち仕事で使用する音楽自体が引き金になっていることがある、という点です。私たちは音楽で密接にクライエントと接するわけですが、それゆえに自分自身で気づかないうちに「仕事での音楽」が「プライベートでの音楽」に入り込むこともあり、その境界線が曖昧になると燃え尽き症候群の引き金になりうるそうです。
私の同僚やスーパーバイザーたちもよく、「自分の音楽の時間」を大切にしており、それは仕事としっかり分けて活動していました。これは私個人の意見ですが、この傾向はミュージシャンとしてのアイデンティティーが強い人ほど気をつけなければいけない要因かもしれません。
年末の忙しい時期、ついついオーバーワークになることがあると思います。セルフケアの大切さを見直しながらお過ごし下さい。
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