小沼愛子
音楽療法とメディア、第4話です。
今回はまず以下の文章をお読みになっていただきたいと思います。(ある本からの引用なので、後ほど出典をお知らせします。)
ここ10年で音楽療法を取り巻く環境が大きく変わってきました。かつては一部の人にしか知られていなかった「音楽療法」「音楽療法士」という言葉が、一般のメディアにひんぱんに登場するようになりました。多くの人たちがこの仕事に興味をもち、どうすれば勉強できるのか、仕事が得られるのかという問いを発しています。・・(中略)・・多くの音楽療法士たちが定期的に集まって交流できる場が多くなり、またインターネットのおかげで、情報の収集や交換も本当に楽になりました。
これを読んで、「現在の音楽療法事情を的確に表している」と思う音楽療法士は少なくないと思います。
この数年、このブログや本会のニュースレター内でこれと似た内容のことを書いてきた私ですが、実は最近この文章を見つけた時には思わず笑いが込み上げてきました。
これは、春秋社から出版されている「音楽療法の実践 高齢者/緩和ケアの現場から」という本の初版の冒頭部分に登場するものなのですが、2000年5月30日に発行されていることから、今から約16年前に書かれたものと推測されます。私が可笑しく思ったのは、16年前に書かれたものが、まるで2016年現在に書かれたもののように感じられたからです。
16年前の日本で、すでに「音楽療法という言葉はメディアに頻繁に登場するようになった」と記され、「インターネットの恩恵」に関しても言及されています。
これを踏まえ、21世紀に入って以来、音楽療法の認知度そしてメディアとの関係は一体どうように変化してきたのか、改めて考えさせられています。
今世紀、アメリカでも音楽療法のメディア露出が確実に増加してきました。それがデータとして残っているわけではないので証明が難しいのですが、一つの指標としてご紹介したいサイトがあります。
何年か前にアメリカ音楽療法学会(AMTA)のウェブサイトに設けられた「Music Therapy in the Media」というページなのですが、アメリカ国内で報道された音楽療法関連の記事やニュース等がずらりと並んでいます。
http://www.musictherapy.org/events/media/
一番古い記事が2002年、次の記事が2005年、と、最初はかなりまばらですが、2010年頃からその数がぐんと増え内容もかなり多岐に渡り、大手メディアで取り扱われる回数が増えてきたことが分かります。
一つ記しておきたいことは、アメリカの音楽療法関連のすべての記事がここにリストされているわけではない、ということです。実際に私が観たり読んだりしたニュースで載っていないものも沢山あります。誰がどう記事を選んでこのページに掲載いるのか謎であり、それに付随する疑問もあるのですが、基本的には有難い資料だと思います。
自分で検索すれば必要な記事等が大概見つけられる時代になりましたが、こうして関連記事が並んでいるとそこから見える傾向もあり、少し違った方向から音楽療法とメディアの関係を眺めることができます。
本会では、毎月音楽療法関連の最新のニュースを集めてニュースレターで紹介してきましたが、それが時系列に並んでいるものは良い資料になると考え、会員専用ページに過去ニュースをまとめたページを設置しています。実は、このウェブサイトの中でも、管理者の私が一番気に入っているページの一つです。(まだご覧になったことのない会員の皆様、是非一度ページをチェックしてみてください。過去3年分の音楽療法ニュースが要旨付きで掲載されています。)ここでも、ニュースの内容や取り巻く環境が変わってきたことを見て取ることができます。
さて、16年前に書かれた上記の文章を読んで、皆さんはどうお感じになったでしょうか?
音楽療法とこれを取り巻く環境は確実に変化してきたと考えている私ですが、当時の書籍に記されたことと類似した見解を現時点でも持っていることは、矛盾なのか?など、色々考えています。
次回の「音楽療法とメディア」では、今一度、ニュースやネットなどのメディア情報の取り扱い方について書いてみたいと思います。
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