小沼愛子
皆さんこんにちは。今週のアメリカ北東部は激しい暴風雪に見舞われ、昨日は仕事も学校もほぼ全面的にお休みとなり、今日もまだお休みの人が多かったようです。
このような時、私は仕事が休みでもあまりのんびりは出来ず、朝から何度にも分けて「雪掻き」をすることになります。
私の力では一気に溜まった雪を除雪することは不可能なため、この「小分け雪掻き方法」を採用しています。他の人達が「なんでまだ雪が降っているのに雪掻きするの?」と不思議に思う中、私のような人達は、独り地味〜に作業します。
さて、本日2度目の雪掻き中、すっかり埋もれていた自分の車のタイヤが見えてきたところでちょっと嬉しくなって上の写真を撮りました。
しかし、嬉しくなったのは束の間。
雪は容赦なく降り注ぎ、まだお昼過ぎだというのに薄暗く、時折強い風が吹きつけてきます。こんな中で雪掻き作業を1日中するのかと思うと、気持は雪嵐とシンクロしてズーンと暗くなってため息が出ます。
その直後のことでした。
これまで嵐の中での雪掻き中に決して経験したことのないことが起こったのです。
まるで常夏の南の島を思わせるような、とっても明る〜いラテン音楽が大音量で聞こえてきたのです。しかも、ノリノリのアップビート。
え?、と思って周りを見渡すと、ご自分の車を掘り出したラテン系のご近所さんが、嬉しくなってカーラジオをオンになさったご様子。
ラテン系の人達が大音量で音楽を聴くこと自体はアメリカでは有りがちなことなのですが、私が驚いたのは、その音楽に対する自分自身の反応です。
この種の音楽が聞えてきて、短絡的に南国をイメージし、「状況と合ってない!」と違和感を覚える、自分の脳へ刷り込まれた特定の音楽がもたらすイメージ・・・
流れている音楽は好きな種類の音楽だったのですが、その時に限っては「全然乗れない」のです。天候と疲れのせいか全く気分が合わない感じで、すべてが浮ついて聞えてしまいます。
しかし、そんな中でも音楽療法士魂が働きます。
一応、せっかくだからノってみよう=音楽を利用してみよう、と、リズムに合わせての雪掻きを試みます。
自分の体力的に、その速いテンポについていくことが出来ません・・・
悲しいことに、状況と音楽が見事にズレズレ、という結果に終わりました。
そこで考えます。
一体どんな音楽だったら自分の気分に合っていたのか・・・
ちょっとビートの利いたミディアムテンポくらいのブルースなんかが流れてこればバッチリだったかなあ、それだったら私の作業テンポにも合っていたし、「雪掻きは嫌いだよ〜、でも仕方がないからやるんだよ〜」と、替え歌も作って唄えて気分的な助けになったかも、などなど・・・
そして、次に脳裏に浮かんだのは。
ノリの良い音楽(と一般的に思われる音楽)をやっている時に、シラ〜っとしていたクライアント達のことです。
音楽療法における音楽の選び方は常に慎重に考えるべきことで、私達は対象者のためにフォーカスするのが当たり前ですが、対象者は私達に「何が聴きたい/やりたい」と伝えてくれるケースは多くありませんから、MTの独りよがりになる可能性があることは残念ながら否定できません。
あの明る〜いラテン・パーカッションいっぱいの音楽は、ご近所さんの気分には合った、聴きたかった音楽なのでしょう。一方、私にとっては妙に「場違い」な音楽で、出来れば止めて欲しい・・・と感じるものでした。
脳への刷り込みは恐ろしいものだな〜と、雪掻きしながら考えました。
流れてきた音楽に対して思いがけず起こる、思ってもみなかった自分の反応。
こんなことがあったら、絶好のチャンスと捉えて、その反応についてあらためて客観的に考えることは、私達の仕事上において何かの助けになるかもしれません。
さて、雪掻きから一夜明け、今日は晴天でした。積もった雪のせいで眩しいほど光り輝く銀世界です。
気温は氷点下ですが、この晴天の中にあのラテン音楽が流れてきたらなかなか良い感じかも、と思いますから、不思議なものです。
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