小沼愛子
先週のある日、日本のテレビ番組のタイトルに興味をひかれ観てみることにしました。若年性アルツハイマー病を患う女性とその配偶者の生活に密着取材したものです。
50台でアルツハイマー病を発症したその女性は現在要介護度5ということで、自身の身の回りの世話(トイレ、お風呂、着替えなど)はご自分では行えない状態だということでした。
しかし、この女性、ぱっと見た感じでは全介護が必要には見えません。まだお若く血色も良く特に問題なく一人で歩きまわるその姿からは、「要介護度5」はなかなか想像がつかないと思います。
そんな彼女の大きな問題点が次々にテレビカメラの前で明らかになっていきます。何度見てもその度に心が痛む、アルツハイマー病患者の方々の身に起こる典型的な症状=残酷な事実ばかりです。
彼女はご主人と二人きりで一軒家で生活しています。ご主人が介護を一切引き受けているという状態です。
要介護度5の家族を介護する大変さ・・・この分野に詳しい方でなくても、「一体どうやって?」と思われるのではないでしょうか?
ご主人はかつて会社人間で家庭をあまり省みなかった部分も大きく、食事の支度などしたこともなかったと自ら語られていました。しかし、覚悟を決めて介護生活に突入。随所にご主人の工夫が見られるその生活には大変感銘を受けました。
さて、ドキュメンタリーの終盤、その壮絶な介護生活に辺り、「毎日、3つのセルを心がけている」ということをご主人がおしゃったのです。
セル?
細胞?
しかし、実際には全然違っていて、
(奥様を)「楽しませる」「笑わせる」
という、「〜させる」という意味でおしゃっていたのでした。
そして、その最後に登場したのが、
「歌わせる」という言葉だったのです!
実際に、奥様がお気に入りの音楽を聞きながら楽しそうに歌い体を動かしている映像がありました。その活き活きとした姿を観た時、音楽療法のセッション中に見てきた患者さん達と重なって見えました。
音楽療法士でなくても、こうして音楽の持つ力を上手に利用している人は沢山いるはずです。この場合、ご主人の奥様を想う気持ちが「音楽の力」の発見に繋がったのかな、と思いました。「奥様の諸症状の軽減や病気の進行を遅らせる効果のあると思われることは何でもトライする」というご主人の心構えが伝わってくる力強いドキュメンタリーでした。
さて、楽しく笑って歌を歌う=音楽療法では決してありませんが、対象をなる人のことを真剣に考えてその人の為に最善と思われることをする、という音楽療法士に必要な基本姿勢を、この介護ドキュメンタリーから再認識させられる気持になりました。
日本でもアメリカでも、若年性アルツハイマー病に脅かされる人々は確実に増えていると認識しています。
私もこれまでに多くの患者さんに出会い、ご本人の苦しみ、そしてご家族の葛藤を目の当たりにし、自分に何が出来るのか考え続けてきました。
この病気を目の前に、自分の無力さを感じたことのある音楽療法士は私だけではないと思います。
この病気が一日も早く完治できるもの予防できるものになることを祈ると同時に、この病気を患う方々の為に音楽療法士に出来ることをより深く考えていきたいと強く思います。
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