小沼愛子
前回に引き続き、AMTA(アメリカ音楽療法学会)の年次学術大会関連のレポートです。前号をご覧になっていなっしゃらない方は、是非ブログその48をご覧下さい。この学会の概要などが書かれています。
今回はこの学会での「音楽療法かけはしの会」スタッフの研究発表についてのリポート、そして、発表に当たって私の個人的な経験と感想も書かせていただいています。
大会開催中、本会スタッフとケンタッキー大学音楽療法教授グッディング博士(Dr. Lori Gooding)の共同研究である“A Comparison of Popular Japanese and English Lullabies”「日本とアメリカ(英語)の代表的な子守唄の比較」のポスター発表を行いました。
現代の日本とアメリカで子守唄としてよく使われている曲を選び、それらの歴史的背景、歌詞、音楽的要素を分析し比較した発表です。
大会中にスタッフ井上とも話したことですが、「音楽やその要素をどう理解してどう使うか」というのは音楽療法という仕事において大変重要な部分であるはずだけれど、音楽療法の学会において、音楽そのものを音楽療法士が考察した発表を見かける事は意外に少ない、という印象があります。そういった意味で、今回の発表は沢山の方に興味を持っていただけたようで、特に、エスニック音楽(日本の音楽も、他文化の人達から見れば“エスニック音楽” のひとつです。)や異文化に興味を持つ方が多く足を止めて下さり、とても楽しく研究についての説明や意見交換出来る発表となりました。
この発表にあたり、私とスタッフ細江は音楽的な要素について分析したのですが、日本の伝統的な曲を西洋音楽理論に乗っ取って分析、説明するのは容易でない部分がいくつかありました。この作業をしていて改めて感じたことは、文章で説明すると分かり辛くなりがちな「音楽という媒体」を、少しでも分かりやすく他者に伝える練習も、音楽療法士にとって時に大切な事柄になるではないか、ということです。「どの音楽やその要素がどう効果的に働くのか」を音楽療法士ではない方々に伝える時に必要になることがあると考えているためです。
そういった意味で、今回の分析は自分にとって大変勉強になったと感じています。特に私個人のこれまでの学会発表は、自分の臨床をベースとしたものばかりでしたから、このような形式が新鮮でもありました。同時に、発表に向けて複数の方との共同作業も楽しくて、今後もこういった研究や発表に携わっていきたい、と感じられる機会にもなりました。
この発表とは別に、スタッフ井上は、グッディング博士とミズーリ大学カンザス市校音楽とダンス校の教授ベルグレーブ博士との共同研究、 “Exploring Pre-Internship Educational Experiences and Perceptions”「プレ研修期間における教育経験と認識についての調査」を発表しました。
この研究は、彼女がフロリダ州立大学在籍中から継続してきたもので、「音楽療法士になるための研修期間前に、大学で行われている経験カリキュラムの在り方は、学生がインターンシップに行った時の学生の在り方に多大な影響を与えているのではないか」という仮説のもと、調査が進められてきました。過去5年間に音楽療法士の認定を受けた300名の回答を基に、今後の音楽療法士を養成するカリキュラム構成を考えるため、現況調査を行い結果を発表したものです。
これらの発表、「A Comparison of Popular Japanese and English Lullabies」と「Exploring Pre-Internship Educational Experiences and Perceptions」のポスターは、本会会員専用のリソースルームに掲載させていただきますので、会員の皆様は是非ご覧になって下さい。
また、自分達の研究発表とは別に、私と井上でお手伝い(翻訳)させていただいたポスター発表も行いました。
岩手県在住の音楽療法士、智田邦徳さんが、昨年の東日本大震災発生直後から続けていらっしゃる被災者の方々の為の音楽療法活動リポートを英語に翻訳、ポスター作成したものです。
次回、ブログその50では、この智田さんのポスター発表とその関連事項を書かせていただく予定です。
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